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最高裁判所第三小法廷 昭和55年(行ツ)152号 判決

上告人 種村一博

被上告人 三重県公安委員会

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審が適法に確定したところによれば、被上告人は、昭和四九年一月二九日上告人に対し上告人の運転免許の効力を一八○日間停止するとの処分(以下「本件処分」という。)をしたが、右処分の日から三年の期間を経過した、というのである。右事実によれば、本件処分の効果は、右処分の日から一八○日間を経過したことによりなくなつたものであり、また、本件処分の日から三年の期間を経過した日の翌日以降、上告人が本件処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなつたことはもとより、他に本件処分を理由に上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法九条の規定の適用上、上告人は本件処分の取消によつて回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。所論の点は、いずれも、本件処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもつて上告人が本件処分取消の訴えによつて回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない(最高裁昭和五三年(行ツ)(第三二号同五五年一一月二五日第三小法廷判決・民集三四巻六号七八一頁参照)。そうすると、訴えの利益を欠くことを理由に本件訴えを却下すべきであるとした原審の判断は、正当であるというべぎである。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 木戸口久治 横井大三 伊藤正己 寺田治郎)

上告理由〈省略〉

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